「生活保護打ち切り」「家賃滞納」の末に…執行官死傷事件
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- 1月21日
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更新日:1月26日
「生活保護打ち切り」「家賃滞納」の末に…執行官死傷事件とは
白昼の住宅街で惨劇は起きた
「急に大きな声がして、サイレンの音が聞こえてきました。遠目に誰かが、倒れている人に向かって『大丈夫ですか。大丈夫ですか』と声をかけているのが見えました。『杉並区 事件』とスマホで調べて、『まさか』と思いました」(近隣に住む60代男性)
1月15日朝10時頃、東京・杉並区和泉のアパート前の路上で男性2人が刃物で刺されたと110番通報があった。被害に遭ったのはアパートに立ち退きの強制執行手続きのため訪れた裁判所の執行官と、家賃保証会社の社員。社員の男性は搬送先の病院で死亡が確認された。
刺したのはアパートの住人である職業不詳・山本宏容疑者(40)だ。山本容疑者は事件後逃走したが、現場から数百mの路上で殺人未遂の現行犯で逮捕されている。
「昨年7月の時点で6畳のワンルームの家賃60万円近くを滞納していたため、貸主が部屋の明け渡しなどを求めて裁判所に提訴。10月には請求を認める判決が出ていました。現時点で滞納額は100万円近くなっていたようです。当日は立ち退きの期限だったために執行官や立会人ら10名でアパートを訪問し、5名が部屋に向かいました。
『持ち物はこれだけです』と、山本容疑者が差し出した箱から黒煙が出ており、中にカセットボンベが入っていたために一同は逃げ出してアパート前で待機していました。すると、部屋で爆発音がしたあとに、包丁を持った山本容疑者が追いかけてきて、被害者2人が襲われたようです」(全国社会部記者) 被害者らを刺した山本容疑者は、一旦部屋に戻ったが、再び外へ逃走し逮捕されたのだった。
「部屋に戻った山本容疑者は、部屋に火を放っていました。取り調べでは『火をつけて死のうと思ったが、煙に耐えられず外に出た』と供述しています。部屋では火災が発生し、焼け跡からカセットボンベ30本が見つかりました。うち1本は爆発していたそうです。犯行の動機については『コロナ禍以降、正規の仕事はしていない。隙間バイトなどで働いていたら生活保護を打ち切られ、自暴自棄になった』と話しているようです」(同前) 容疑者が住んでいたのは、家賃5.5万円の2階建てのアパートだった。1階は店舗だが、現在は営業はしていない。閑静な住宅街で起きたセンセーショナルな事件であるため、住民にはかなり衝撃だったようだ。事件のあったアパート沿いに住む人は「最初は火事だと思った」と語る。
「サイレンの音が近づいて家の近所で止まったのでそう思いました。でも、自転車を停めて話をしている方に話を聞くと、『誰かが刺された』とのことで驚きました。しばらくして警察官に連れられてパトカーに乗る人を見たのですが、恐らく彼が山本容疑者ではないでしょうか。一見、温厚そうな風貌で、うつむきながら素直に連行されていました」 山本容疑者を見たことがあるという60代の女性は「おとなしそうな人で、どこか暗い印象がありましたが、人を殺すような人には見えなかった」という。
「ゴミ捨てをするときに見かけたりして挨拶をしたことがあります。こちらが挨拶をすると、軽く会釈をして『おはようございます』と小声で返してくれました。内気そうな人だとは思っていましたが、まさかこんな事件を起こすなんて……」 現場付近は事件翌日の16日になっても「発火の恐れがあるため通行できません」とのことで警察によって道路は封鎖されており、解除されたのは夕方5時を回ってからだった。 「住むところが無くなり、すべて終わりだと思った」と供述していた山本容疑者。何の落ち度もないのに巻き込まれて命を失い、重傷を負った被害者の無念を思えば、身勝手極まりない言い分だ。ネットでは「まだ40代で隙間バイトもできるのになぜ働かなかったのか」と非難の声もあがっている。福祉事務所関係者は「隙間バイトをしていたからといって、生活保護をいきなり打ち切られることはない」と首をひねる。
「働きながらでも保護費を受給することは可能です。ただ、収入を申告することは必須で、申告していなかった場合は不正受給と認定されて、打ち切られる場合があります。それでも未申告=即不正受給・即廃止となるわけではありません。
発覚した段階で正直に申し出て説明すれば、指導や過去分の調整で済む場合もあります。指摘されても認めなかったり、説明を拒否したりした場合には、不正受給と判断され、支給停止や返還請求となる可能性が高くなります」 山本容疑者は心身の状態が思わしくなくて働けなかった可能性もある。たとえそうだとしても、救いを求める手段はあったはずだし、ましてや他人の命を奪う理由にはならない。
なぜ、彼はそこまで追いつめられたのか。捜査の進展が待たれる。